ビフィズス菌の重要性(1)
2020年3月31日
まずは、私たち人間とビフィズス菌の最初の関わりからお話しましょう。
私たちの体のなかで、ビフィズス菌がもっとも多く存在するのは赤ちゃん時代、それも生後1週間くらいのときです。
子宮のなかにいる赤ちゃんは、ほぼ無菌状態。産道にはママの体内の腸内細菌が存在しており、出産時、赤ちゃんが産道を通りママに触れ合うことで、赤ちゃんの口や鼻からママの腸内細菌が入り込みます。
また最近では、ママが妊娠中の腸内細菌の状態が赤ちゃんに反映されているという研究結果も出ています。
いずれにしろ、腸内細菌は「ママからの最初のプレゼント」と言っていいでしょう。
そして、出生後空気中の細菌や、ママや病院スタッフの手指などに付着する細菌が、口や鼻から入ります。生後1日目にはすでに大腸菌などが便から検出されます。
しかし生後3、4日目になると、母乳に含まれるビフィズス因子(ビフィズス菌の生育に必要な因子)やオリゴ糖の効果から、腸内にはビフィズス菌が増えて大腸菌などが減っていき、生後1週間頃にはビフィズス菌が最大勢力に。
なんとこのとき、腸内細菌の95%以上をビフィズス菌が占めています。3ヶ月くらいまでは約90%ですが、離乳食が始まるとその比率は減少。3〜5歳で腸内フローラのバランスが決まるといわれています。
ただ、大人になるにつれビフィズス菌の割合はどんどん下がっていき、成人では約10~20%、60歳以上だとなんと1%以下にまで低下してしまうケースもあるのです。
ビフィズス菌など善玉菌が減り、悪玉菌が増える=「腸内フローラ」のバランスが崩れると、体ではどんなことが起きるのでしょうか。
悪玉菌が増えると腸内腐敗が促進され、有害物質を作り出します。それにより便秘や下痢などが起こるだけでなく、肌荒れや心身の不調、ガスの発生などが表れます。
私たちの腸内には、重さにして1〜2kgにもなる腸内細菌が棲息しています。その腸内細菌は「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」に分けられ、この3種類が日々争っているのです。
日和見菌というのはその名の通り、善玉菌が優勢であれば善玉菌に、悪玉菌が優勢であれば悪玉菌に加勢する、日和見主義な菌のこと。
何らかの原因で悪玉菌が優勢になれば、多数派を占める日和見菌が、一気に悪玉菌の味方になり、腸内腐敗が進んでしまいます。
理想的なバランスは善玉菌2割、悪玉菌1割、日和見菌7割とよくいわれていましたが、実は人によってその理想的な布陣はさまざまとも。
また、悪玉菌のなかにもよい働きをするものがあったり、反対に善玉菌とされているのにその人によってはいい働きをしないものもあるのです。善玉菌が多ければ多いほどいい、というわけではないのですね。
健康な人と病気の人の腸内を調べると、病気の人やアレルギーを持っている人では腸内フローラの多様性が低下している=腸内細菌の種類が少なくなり、さらに悪玉菌が優勢になることがわかっています。
多様な腸内細菌がお互いに作用し合うことで、ヒトは健康を保っているんですね。なんだか人間の社会と似通っていて、興味深いお話です。
次回は悪玉菌との関係から、ビフィズス菌の重要性を考えてみます。
参考文献
『ドクターサロン60巻 2月号』(1.2016)/『腸を鍛える―腸内細菌と腸内フローラ』光岡 知足(著)祥伝社新書/『整腸力』辨野義己(著)かんき出版