今井眞一郎卓越教授インタビュー・後編

2024年2月1日

“NMNブーム”で終わらせない!日本が「幸せな健康長寿国」になるために大事なこと

36年以上にわたり老化・寿命研究の最先端を牽引してきた、ワシントン大学の今井眞一郎(いまい・しんいちろう )卓越教授。2023年8月にはワシントン大学から、テオドール&バーサ・ブライアン卓越教授(環境医学)の称号※を授与され、その研究に世界から熱い視線が注がれています。

このたび、「臓器間コミュニケーション」に関する重要な発見に関する論文を発表した今井卓越教授にお話を伺いました。前後編。

NMNを選ぶときのポイント

--後編では、すでにサプリメントとして飲んでいる方も多いNMNについて選び方のポイントを伺えればと思います。

今井:NMNを経口摂取する際にまず確認したいのが、製造法です。化学合成法なのか酵素法なのか酵母法なのかをチェックして、その上で現時点では発酵法か酵母法で作ったものを選ぶのが良いと思います。ただ、化学合成法でも非常に高品質のものが出来てきているので、生体が必要とするベータ型のNMNが純粋に含まれていることを確認できれば、化学合成品でも大丈夫でしょう。

また、どこで作っているかの確認も大事です。海外製品でも高品質の製品を作っている会社もありますので、情報をきちんと開示してくれる会社のものを選んだほうがいいと思います。

純度については、最近はほとんどが98%以上の純度をうたっていますが、どんな不純物が混ざっているかを確認しましょう。発酵法や酵母法で作っていれば生体に存在しないような不純物が入る可能性はほとんどありません。通常は入っているとしたらニコチンアミドくらいなのですが、これはビタミンB3なので問題ありません。

あとはどんな試験をしたのかという安全性のチェックですね。「医師が推奨」という広告も見かけますが、本当にNMNのことをわかって話している医師は少ないと個人的には感じます。

いずれにしても、製品を販売している会社に直接問い合わせて、これらの情報について聞いてみるのが一番良いと思います。そこできちんと対応してくれる会社は、良心的であり、製品の品質に自信があるのだと思えるからです。

日本が幸せな健康長寿社会を実現する成功例に

--セミナーでもNMNは超高齢化社会の問題を解決する方法の一つになり得るというお話がありました。NMNを一過性の流行で終わらせないために大事だと思うことを改めてお聞かせください。

今井:まずは正確な知識ですね。消費者が上記で述べたような点をチェックして商品を選ぶことも大事ですが、NMNを製造・販売する企業やメディアがエビンデンスに基づいた正確な情報を丁寧に発信することが求められます。

また、値段がもう少しリーズナブルなレンジに落ちるといいですね。NMNが登場した当時よりもだいぶ安価にはなりましたが、もう一歩というところでしょうか。

最近ではウェブサイトやYouTubeなどでNMNについて言及しているものも多数見かけるようになりましたが、そこで語られている知識は伝聞のようなものが多く、かなり不正確な情報が含まれています。ですから、NMNの研究や開発に実績のある研究者や医師からの直接の情報をしっかりと入手することが大事です。

--セミナーでは日本でNMNやeNAMPTを開発することが大事とおっしゃっていました。

今井:日本がNMNやeNAMPTを用いた科学の力で健康長寿社会を実現する成功例を作って世界に発信することが大事です。経済的にも世界での日本の存在感が落ちてきている中で「日本はこんな方法で健康長寿社会を実現したのか」と言われるようになることが理想です。外国で開発すると日本が技術料を支払うことになってしまい本末転倒です。基幹技術は日本の中で開発することが大事です。

--毎回のインタビューでも強調されているように、医療費の高騰を抑えるためにも「予防に尽きる」ということでしょうか。

今井:まさにその通りです。高騰する医療費を抑えるには、個々の疾患の治療も大事ではありますが、予防が唯一の解決策です。「予防医学」という言葉もだいぶ広まってきましたが、医師でさえその具体的な解決方法は手探りの状況です。日本の未来のためにも具体的で確実に効果がある予防の方法が求められています。そういう意味でもNMNやeNAMPTは期待できると思います。

前編を読む

※Distinguished Professor(卓越教授)の称号は、米国の大学において非常に功績のあった、優れた業績をもつごく少数の教授にのみ与えられ、大学に対して大きな貢献のあった個人あるいは家族の名前が冠せられるのが慣習となっている。今回は、今井教授の長年にわたる老化・寿命研究分野での業績が評価され、地球環境に大きな貢献をもたらす医学研究である、ということから当称号が授与された。

https://www.irpa.ne.jp/news
より引用

プロフィール今井眞一郎 卓越教授
1964年東京都生まれ。慶應義塾大学医学部卒業、同大大学院修了。医学部生の頃から細胞の老化をテーマに研究。1997年渡米、マサチューセッツ工科大学にて老化と寿命のメカニズムの研究を継続。2000年、サーチュインによる老化・寿命の制御を発見。2001年からワシントン大学助教授、2008年准教授、2013年から現職。老化•寿命のメカニズムの研究、およびNMNを中心とした抗老化方法論の研究を牽引し、2023年にワシントン大学からテオドール&バーサ・ブライアン卓越教授の称号を授与された。一般社団法人「プロダクティブ・エイジング研究機構」代表理事も務める。

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