インフルエンザと腸内環境(2)
2020年5月28日
寒い季節になると、インフルエンザや風邪などが流行します。最近ではビフィズス菌をはじめとした腸内細菌の働きが、インフルエンザの予防になる可能性がわかってきました。
そこで、睡眠やストレス、食事などから「生活習慣病としてのうつ病」を専門とする心療内科医の田中奏多(たなか・かなた)先生に、「腸内環境とインフルエンザ」をテーマにお話を伺いました。
-ー冬になると毎年インフルエンザが流行します。そもそもインフルエンザとは何でしょうか?
田中奏多先生(以下、田中):インフルエンザはインフルエンザウイルスが引き起こす急性の呼吸器感染症です。インフルエンザウイルスに感染すると、38℃以上の高熱、関節痛、悪寒などの症状が認められます。
-ー腸内環境とインフルエンザとの関係を教えてください。
田中:まずは腸内環境と免疫の関係からお話しますね。「腸内フローラ」を構成する菌は、私たちの体の免疫の発達と機能に影響を与えています。「腸内フローラ」の菌や菌に代謝された物質は、ウイルスや細菌などの敵が体内に入った際にまず駆けつける「自然免疫」に深くかかわっていることが明らかになっています。
-ー腸内環境が免疫力に影響を与えるということですね。
田中:そうですね。免疫には、今お話しした「自然免疫」と、感染した病原体を記憶することで、同じ病原体に再度感染したときに効果的に病原体を排除できる「獲得免疫」があります。余談ですが、ワクチンは獲得免疫の仕組みを利用して生まれています。
最近では、腸内細菌が、「自然免疫」だけでなく「獲得免疫」にも重要な役割を担うことも明らかになっています。
田中:さて、本題のインフルエンザと腸内細菌のかかわりでは、腸内フローラは腸内環境だけでなく、インフルエンザウイルスに反応する肺や、全身の免疫の反応にも深くかかわっていることが最近わかってきました。
実際にどのような腸内細菌が肺や全身の免疫反応にかかわっているのか、明らかにするには今後のさらなる研究が必要です。研究が進むと、インフルエンザワクチンの効果を高める食品の開発ができるのではと考えられています。
-ーそれは楽しみですね。
-ーインフルエンザにならないためには、どんなことに気をつければ良いでしょうか
田中:インフルエンザは飛沫(ひまつ)感染、接触感染といった感染経路を絶つことが重要であり、「手洗い・うがい・マスク」が重要です。
東洋医学からのアプローチでは冬は体を冷やさないことが重要です。食事で生姜やネギなど、体を温める食事を意識的にとりましょう。
-ー基本的な「手洗い・うがい・マスク」と体を冷やさないということですね。
田中:また、免疫力を高めるために、「バランスの良い食事と安定したリズムの睡眠」なども重要です。具体的には、リズムを整えるために、「①同じ時間に起きる」「②起床後1時間以内に太陽の光を浴びる」「③同じ時間に朝ごはんを食べること」などが具体的な行動として推奨されます。
また、重症化予防に11月ごろからインフルエンザワクチンによる予防接種も大事です。