腸内環境とストレス(3)

2020年5月28日

体内時計が腸内フローラに影響 質のいい睡眠をとるポイントは?

私たちの大腸内には腸内細菌が住み着いており、その細菌たちの生態系を腸内フローラといいます。

腸内細菌は私たちの体の働きにさまざまな影響を与え、健康状態や病気の発症などとの関連が注目されています。体にとって有益であると考えられる細菌は善玉菌(乳酸菌やビフィズス菌など)、有害な影響を与える細菌は悪玉菌(ブドウ球菌やウェルシュ菌など)と呼ばれています。

腸内細菌は、バランスを保ちながら共存しています。腸内フローラのバランスが崩れるとおなかが張ったり、便秘や下痢になったり、肌が荒れたりと体調を崩しやすくなりますが、ストレスとの関係もわかっています。

そこで、睡眠やストレス、食事などから「生活習慣病としてのうつ病」を専門とする心療内科医の田中奏多(たなか・かなた)先生に「腸内環境とストレスの関係」をテーマにお話を伺いました。全4回。

体内時計が腸内フローラのバランスに影響

--前回は腸内環境とストレスの関係について伺いました。腸内環境を整えるためにはリラックスタイムをとることも大事ということでしたが、睡眠も大事なのでしょうか?

田中奏多先生(以下、田中):そうですね。睡眠は、昼間の活動で疲れた脳を積極的に休ませる「恒常性維持機構(ホメオスタシス)」と、疲れていなくても就寝時刻になると眠くなる「体内時計機構」で調節されています。

体内時計も腸内フローラのバランスに影響を与えることがわかっています。まずは、体内時計を整えることが大切です。

--体内時計を整えるためのポイントはどんなことでしょうか?

田中:体内時計を整えるためには、「毎朝同じ時間に起きること」「朝起きたら太陽の光を浴びること」「朝ご飯をきちんと食べること」の三つを覚えておきましょう。

朝の光は中枢の体内時計をリセットするため、毎朝同じ時刻におき、光を浴びましょう。人間は1日1時間しか体内時計を早めることができないので、お寝坊をするとしても+1時間以内にしましょう。

また、体内時計を整えるだけでなく太陽の光は幸せホルモンと呼ばれる「セロトニン」のセロトニン神経が活性化されます。

朝ごはんは末梢の体内時計である空腸、肝臓を刺激することがポイントです。「きちんと」食べるというと「たくさん」食べるという印象を持っている人もいますが、「朝からそんなに食べれないよ」という人もいると思います。おにぎりやバナナなど一口でもいいので何かを口に入れるようにしましょう。何か口に入れることで腸も動き出すので便秘予防にもなります。

トリプトファンを多く含む食品をとる

--体内時計のほかに、質のいい睡眠をとるためにはどんなことに気をつければよいでしょうか?

田中:そうですね、眠りに関わる「メラトニン」というホルモンがあります。メラトニンは脳内の中央、二つの大脳半球の間にある松果体(しょうかたい)から分泌されるホルモンで体内時計に関わります。

そのメラトニンの元となるのが通称“幸せホルモン”と呼ばれる「セロトニン」です。

--聞いたことがあります! セロトニンが増えればいいということですね。

田中:その材料となるのが「トリプトファン」です。トリプトファンは体内で十分に生成できないので、食品からとる必要があります。

--トリプトファン……聞きなれない言葉ですが、どんな食品に含まれているのでしょうか?

田中:トリプトファンは牛乳から発見された必須アミノ酸の一つで、肉や魚、豆腐や納豆などの大豆製品、牛乳やチーズなどの乳製品、卵、ナッツ類などに多く含まれています。

特に、私が特におすすめしているのはバナナです。バナナにはセロトニンを作るために必要なトリプトファン、ビタミンB6、糖がバランスよく含まれているので、特に苦手でなかったら意識的に食べるようにしたいですね。

質のいい睡眠をとるための習慣

--質のいい睡眠をとるための生活習慣はいかがでしょうか?

田中:そうですね、よく就寝前にアルコールをとる人がいると思うのですが、寝る前の飲酒はかえって睡眠の質を悪化させるので控えたほうがいいですね。また、寝る前にコーヒーや緑茶、紅茶などのカフェインを摂取すると、寝つきを悪くしたり、睡眠を浅くする可能性があるので就寝前 3〜4 時間は控えたほうがいいです。

睡眠の環境を整えることも大事です。明るい光には目を覚ます作用があるため、部屋の電気を電球色に変えたり、寝る1-2時間前から照度をおとしたりして眠りを妨げない工夫もおすすめです。

参考文献
「一般社団法人日本看護学校協議会共済会」HP/厚生労働省「健康づくりのための睡眠指針2014」

プロフィール田中奏多先生
心療内科医・産業医・調理師。
「働く人を支える」薬に依存しない心の医療を展開するBESLI CLINICを2014年に協同創設しました。マサチューセッツ大学MBACourse在学中、産業医の視点からもビジネスマン・ビジネスウーマンを支えております。調理師として栄養指導や、和漢(東洋医学)、ホルモンをベースに身体から心に、新しいうつ病の治療のTMS治療で脳から心にアプローチする診療をしております。米国マウントサイナイ大学病院へ留学、ハーバード大学TMSコースを修了しました。TMSをクリニックへ導入、世界最新の日本人に合わせたTMSの技術指導、統括を行っています。

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