便秘と肌(1)
2020年5月13日
日頃から便秘に悩んでいるという女性は多いのではないでしょうか?便秘は、ダイエットや運動不足、忙しくてストレスが多い生活や食物繊維がなかなかとれない食生活などさまざまな原因が考えられますが、便秘のせいで吹き出物など肌トラブルが起こることも……。そこで、皮膚科専門医・田中敬子(たなか・けいこ)先生に「便秘とお肌の関係」について3回にわたってお話を伺いました。第1回目のテーマは、「便秘が肌に悪影響を及ぼすメカニズム」です。
--一般的に「便秘はお肌に悪い」と言われていますが、なぜ便秘が肌に悪影響を及ぼすのでしょうか? メカニズムを教えていただきたいです。
田中敬子先生(以下、田中):便秘になると、腸内環境が悪化し、悪玉菌が増え、悪玉菌が腸内のタンパク質を腐敗させて、フェノール類やパラクレゾールといった有害物質が腸内に蓄積されます。それら有害物質が腸壁の毛細血管から吸収され、血液中にめぐって全身に行き渡ります。
その結果、皮膚にも有害物質の影響で肌荒れが生じ、吹き出物が出やすくなったり、肌が黒ずんでツヤがなくなったりと肌のトラブルにつながります。
--なるほど。そういうメカニズムなのですね。
また、血液が濁るとリンパの流れが滞り、代謝が落ちてむくみやたるみの原因にもなります。実際に、便秘の人は肌の乾燥やニキビなどの肌トラブルが多いです。
せっかく美容や肌にいいと言われる成分をとったとしても、腸内環境が乱れているとそれらの成分も吸収されにくくなります。「便秘は美容やお肌の大敵」と言われるのはこういうわけです。
--腸内環境を整えることが肌にとってもよいということですね。
--一口に「便秘」と言ってもいろいろなタイプがあると思うのですが……。
田中:日本内科学会では便秘について「3日以上排便がない状態、または毎日排便があっても残便感がある状態」と定義しています。また、日本消化器病学会では、「排便が数日に1回程度に減少し、排便間隔不規則で便の水分含有量が低下している状態(硬便)を指すとしています。
一般的に便秘には「弛緩(しかん)性便秘」「痙攣(けいれん)性便秘」「疾患性便秘」の三種類があります。
弛緩性便秘は、腸管の緊張がゆるんで大腸のぜん動運動が低下してしまい、便が大腸内に長くとどまり水分が過剰に吸収されて硬くなってしまうタイプの便秘です。食物繊維不足やデスクワークが多くて長時間同じ姿勢をしている人、運動不足の人、朝食を抜きがちな人に起こりやすいです。
痙攣(けいれん)性便秘は、ストレスや睡眠不足などで自律神経が乱れて腸が痙攣(けいれん)するような動きをとり、便がスムーズに肛門へ進んでいかない状態です。心理的なストレスや自律神経の乱れ、ホルモンバランスの崩れで起こりやすい便秘です。
疾患性便秘は、大腸の腫瘍や炎症、癒着(ゆちゃく)によって起こる便秘で医療機関での根本的な治療が必要な便秘です。
肌に関係があるのは、弛緩性便秘です。日常生活の習慣や食生活で防げると言われているので、弛緩性便秘で悩んでいる方は、まずはご自身の食生活や生活習慣を振り返ってみてはいかがでしょうか。
--そうですね、次回からは便秘を防ぐための食べ物や生活習慣について伺いたいと思います。